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WSJの論考でも触れられているように、世界中で「軟骨を再生する」「病気の進行そのものを止める」ための研究が進められています。ただ、整形外科の臨床現場に立つ立場から正直にお伝えすると、現時点で「一度ダメージを受けた軟骨が、もとの健康な状態に戻る」と言い切れる治療法は、まだ私たちの前にはありません。これは耳の痛い話かもしれませんが、だからこそ今ある選択肢を丁寧に見つめ直すことが大切だと考えています。…

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「変形性関節症は治るのか」――そんな根源的な問いを正面から扱った論考が、米ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されました。関節の軟骨がすり減り、朝のこわばりや階段の痛みにお悩みの方は少なくありません。「完治」という言葉に振り回されず、今の自分にとって意味のある一歩を考える材料として、この話題を取り上げてみます。

「治る」という言葉の重さを、一緒に整理しましょう

外来で患者さんと向き合っていると、「先生、私の膝は治りますか」という質問をよく受けます。変形性関節症は、加齢や長年の負荷によって関節軟骨が徐々に傷つき、炎症や骨の変形が進む疾患です。進行すれば、立ち上がりや歩行そのものがつらくなり、買い物や旅行を控えるようになってしまう方もいます。

完治を待つ間に、今日からできることがあります

「治らない」と聞くと、気持ちが沈んでしまう方もいらっしゃるでしょう。でも、痛みを和らげ、動ける範囲を広げることは、今この瞬間から可能です。大切なのは、「劇的な変化」ではなく「続けられる小さな習慣」をひとつずつ積み上げることだと、私は患者さんにお伝えしています。

例えば、太ももの前の筋肉である大腿四頭筋は、膝関節を安定させる大きな役割を果たします。椅子に深く座り、片脚ずつ膝をゆっくり伸ばして5秒間キープし、ゆっくり下ろす。これを1日10回程度、朝と晩に行うだけでも、膝周りの支えは少しずつ強くなっていきます。痛みが強い時期は無理をせず、支えをもってできる範囲から始めてみましょう。

体重管理も、効果の出やすいセルフケアのひとつです。体重がわずかに増えただけでも、歩行時には膝関節への負荷がそれだけ大きくなる――これは外来で長年患者さんを診てきた実感でもあります。厳しい食事制限ではなく、「夜のお菓子を一口分減らす」「駅では一段多く階段を使う」といった、小さな選択の積み重ねが、10年先の膝を守ってくれるはずです。

そして、痛みが強い時期には、我慢を重ねないでください。消炎鎮痛薬の適切な使用、ヒアルロン酸注射、理学療法士によるリハビリテーションなど、症状の段階に応じた医療の選択肢は確実に広がっています。「年のせいだから」と片付けず、怖がらず、早めに相談してほしいと思います。

ニュースの「期待」と「自分の膝」を、冷静に見分けましょう

WSJの論考が「治るのか」という問いを投げかけたということは、研究者も同じ問いを今も追い続けているということです。再生医療や新しい作用機序の薬剤など、将来的な可能性を示す話題は、これからもしばらく目にすることでしょう。

ただ、患者さんにお伝えしたいのは、ニュースの「明るい話題」と「今の自分の関節の状態」は別ものだということです。新しい治療が話題になるたびに気持ちが揺れる必要はありません。むしろ落ち着いて、今の自分の膝や腰がどの段階にあるのかを担当医と一緒に把握し、生活の中でできるケアを地道に続けること。それが、一見遠回りに見えても、最も確実な「進行を遅らせる道」だと私は思います。

朝、布団から出る瞬間に膝がこわばる方、買い物帰りの坂道で足が止まる方――あなたのその感覚は、決して軽いものではありません。ただ、諦める必要もまたありません。焦らず、比べず、自分の身体と丁寧に向き合っていくお手伝いを、これからもしていきたいと思います。

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